研究概要 |
1.本研究の概要 21世紀に入り,「素粒子宇宙実験物理学」が誕生しようとしている。宇宙に存在する巨大加速器を用いて,素粒子で宇宙を探り,宇宙という舞台で素粒子を探る学問である。本研究ではその創設を目指す。本研究で用いる観測装置,ASHRA(All-sky Survey High Resolution Air-shower Detector)望遠鏡は主に東大宇宙線研を中心に共同開発している。ASHRA望遠鏡は,3枚の補正レンズ,球面鏡,20"口径イメージインテンシファイア(II),光学パイプライン,トリガーシステム,CMOSセンサーから成る。補正レンズにより焦点面に1分角の精度で集光された画像は,精度を保ったままIIにより縮小され,光学パイプラインにより伝送されてCMOSセンサーで録画される(図1,図2)。スプリッターにより光を分けることにより,常時露光し録画する系統(GRB観測)と,トリガーシステムにより興味ある事象だけを録画する系統(その他の観測)とを同時に実現している。 2.ASHRAプロトタイプによる結果 設計の正しさ,性能を確認するため,ハワイ島の隣のマウイ島ハレアカラ山山頂において実機の2/3のプロトタイプ望遠鏡を用いて観測を行った。その結果,ガンマ線バーストGRB041211を発生直前,直後から観測することができ,その光学閃光の上限値を与えることができた。この結果は望遠鏡が設計通りの性能を示していることを実証するとともに,常時全天を監視している利点を端的に示した。 3.実験の現状 既にASHRA望遠鏡の全ての項目の開発を終え,望遠鏡が完成した。全体試験を行った結果,1分角の分解能が42度×42度の広い視野で達成されていることが確かめられた。CMOSセンサーについては,350nmテクノロジーを駆使した設計を終え発注したところである。完成した望遠鏡は,ハワイ島マウナロア山山腹(標高3100m)にある観測地に送られ,順次組み立てられている。まもなく1号機による観測が始まる予定である。
|