(1)グラファイト微細構造の作製条件の確立 最も基本的な人工微細構造としてミクロン幅の細線構造を例にとり、試料作製条件の条件出しを行った。まず人工単結晶であるKishグラファイトおよび超高配向多結晶であるスーパーグラファイトをへき開してミクロン以下の薄片にする工程の検討を行った結果、粘着テープを用いた単純な方法がプラズマ処理などに比べ好ましいということになった。また薄片の2次元微細構造への加工については、既存のイオンシャワー装置を用いて酸素イオンビームによる反応性イオンエッチングを試みたところ、有機レジストのマスクでは困難であるが金属マスクに転写して加工すれば微細加工可能であることがわかった。このようにして求めた条件により線幅10μm程度のグラファイト細線試料を作製した。次にエッチングによる電子系のダメージを調べるために、未加工試料と細線試料の磁気抵抗測定をパルス強磁場下で行った。10T以下のShubnikov-de Haas振動の振幅、および30T以上の磁場誘起電子相転移の転移磁場に変化はなく、プラズマプロセスによる試料の劣化は見られないことがわかった。 (2)パルス超強磁場下磁気抵抗測定への応用 線幅10μm程度のグラファイト細線試料はバルク試料と同様の物性を示すことがわかったので、これを用いてパルス超強磁場下のグラファイトの磁気抵抗測定を行った。一般に100T以上の超強磁場は幅数マイクロ秒程度の単発パルスとしてのみ得られる。この超強磁場下で磁気抵抗測定を行う場合、試料内に誘導される渦電流による試料の自己発熱が致命的障害となる。この発熱は試料サイズを微小化することにより局限できる。細線試料について実験を行った結果、渦電流による発熱を大幅に抑え信頼性の向上したデータを得ることに成功した。
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