研究課題
高分子融液の結晶化中に結晶・非結晶密度の違いを活用して負圧を発生させるためには、結晶性高分子薄膜中に両面基板と整列された球晶とで囲まれた「器」をまず作成することが不可欠である。球晶の一次核形成測度の非常に遅いイソタクチックポリスチレンを用いて融液中で球晶を意図的に円状に並べるための各種実験を試行錯誤で行なった。不作為による球晶発生の確率が低く、核発生要因の導入によって意図するところに容易に球晶が発生させられる可能性があるからである。その中でミクロンサイズのマスキングパターンでマスキングして金を円盤形状に表面に蒸着したイソタクチックポリスチレン薄膜融液中において球晶がその円盤の縁、あるいはその縁からごくわずかに離れた位置に整列することを一連の実験で見出した。金ナノ薄膜の存在によってポリスチレン融液中の応力不均一が起こりそれが引き金となって球晶の発生が非常に促進されると考えられるが、その発生メカニズムを説明するにはさらなる詳細な実験が必要である。また、両面を基板に挟まれた状態ではなくて片面が解放されたキャスト膜においての結果であるので、球晶を円状に並べた後、その「器」の中に負圧を印可させたい物質粒子を封入した後、上面を基板で蓋を施した後、再び高分子の試料の結晶化を進めることによって物質粒子に負圧を印可することが可能になったと考えられる。また、キャビテーションに関しては負圧の発生とは別に基板との摩擦等によっても発生する可能性が別の実験によって見いだされた。そのキャビテーションの発生・発展・消滅メカニズムはオストワルドのライプニング的な挙動を見せるなど物理的にも興味深いものであり、より詳しい検討が必要である。
すべて 2006
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Journal of the Physical Society of Japan 75,2
ページ: 024605