研究課題
ヘリウム3の原子核はスピンに依存した大きな中性子吸収断面積を持つ。これを利用した中性子スピン・フィルターが各国で研究されているが、十分高い偏極率や長い緩和時間を得ることが非常に難しく、中性子散乱実験での実用例は多くない。本研究は中性子散乱実験での実用化を目指したヘリウム3偏極装置の高性能化、特に偏極緩和時間の延長化について研究を行うべく、ヘリウム3スピンの緩和時間を低温領域で測定し、その温度依存性を研究する。偏極ヘリウム3核は、主としてセル壁面での壁緩和とヘリウム3核同士のスピン相互作用により緩和が進むので、低温にすれば両散乱頻度が減少し、緩和時間の延長が期待できる。しかし、ガラス壁面ではヘリウムが透過・拡散するため、必ずしもこのように単純な現象のみではなく、低温での偏極緩和現象を調べることは偏極装置高性能化へ向けた重要な基礎研究となる。具体的には、ヘリウム3を封入したセルをデュワーに収め、そこに低温の窒素ガスを流しセルを冷却する。ヘリウム3の偏極緩和時間は、NMRを用いヘリウム3の偏極率を数日ないし一週間程度に渡ってモニターし続けることにより測定する。NMRでは、高周波電磁場を用いるためデュワーは銀メッキのない透明ガラス製とした。平成17年度は、既存のヘリウム3偏極測定用NMRシステムに対して冷却窒素ガスのフローによるセル冷却システムを付加する改造を進めた。NMR測定は、一定の温度で最長一週間に渡って続けられるため、セルの温度制御は冷却窒素ガスのフローをコントロールすることにより行うようにしてある。平成18年度は、セル冷却システムの試験を行い、必要に応じて改良を加える計画である。これと平行して、本研究用に用いるヘリウム3偏極セルの開発を進め、続いて実際の測定を開始する計画となっている。
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