研究概要 |
近年発見された強磁性超伝導体UGe_2[1]は驚くべきことに強磁性状態で超伝導が生じている。このUGe_2ではどのような超伝導が生じているのか?何故強磁性状態で超伝導が生じるのか?と大変興味深く思われる。平成17年度の研究成果として、強磁性磁化方向に平行なスピン対を形成する強磁性的な非ユニタリー超伝導体がUGe_2では実現していることを核磁気緩和率(1/T_1)より指摘した。またFM2からFM 1ヘ一次転移する圧力P_xで急激に増大するN_↑(E)が縦方向のスピン密度揺らぎをも生み、超伝導を媒介していると推測した。今年度は、超伝導発現機構として考えられる縦方向のスピン密度揺らぎの存在、普遍性を明らかにすべく研究を取り組んだ。またUGe_2と同時に縦方向のスピン密度揺らぎを媒介とする超伝導である可能性を持つ反強磁性体CeNiGe_3[2]についても研究をすすめた。 縦方向のスピン密度揺らぎを追究する上で新しく取り組んだことはT_2測定である。T_1(縦方向緩和時間)測定は量子化軸に垂直な成分の電子スピン揺らぎの存在を知ることができるのに対し、T_2(横方向緩和時間)測定は量子化軸に平行な成分の電子スピン揺らぎの存在を知ることができる。つまりT_1、T_2測定より磁気揺らぎの角度依存性を知ることができる。超伝導体CeNiGe_3におけるT_2測定の結果、反強磁性状態にもかかわらず量子化軸に平行な電子スピン揺らぎの発達を観測した。同様な実験手段でUGe_2について調べたところ、やはり超伝導の背景では縦方向の電子スピン揺らぎの発達が観測された。強磁性体のみならず反強磁性体においても縦方向のスピン密度揺らぎを媒介とする超伝導が発現することを明らかにした。 [1]S. S. Saxena et al.,Nature 406,587 (2000). [2]H. Kotegawa et al.,J. Phys. Soc. Jpn. 75,044713 (2006)
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