研究概要 |
実験・理論的側面から、それぞれの今年度の研究業績を以下に記す。 (実験:秋光、村中) フラットなバンド分散を有する可能性が理論計算から指摘される二次元正方格子,カゴメ格子,三角格子を有する物質群と発現する物性との関連性を調べるため、Ca_<2-x>Na_xCuO_2(Cl, Br)_2,La_<2-x>(Ca, Ba)_xCoO_4,Lu_2V_2O_7,CeAgAl_3,Ce_2TSi_3の詳細な物性測定を行った。Ca_<2-x>Na_xCuO_2(Cl, Br)_2に関しては、頂点C1/Br比の変化によるその超伝導特性の制御に成功し、ラマン分光測定において、この系における超伝導発現機構のみではなく、銅酸化物超伝導体全体における頂点サイトの役割に対して重要な示唆を与える結果を得た。CeAgA1_3, Ce_2TSi_3(T=Pt, Pd, Rh)に関しては、それぞれCeが二次元正方格子,カゴメ格子を形成すると考えられ、含有遷移金属を制御した単結晶育成により、強磁性及び反強磁性を示すよう物性を制御することが可能であることを示した。 (理論:久保、古川、宮原) 平坦バンドによって、特異な物性が出現する一つの典型例として、平坦バンドを含む2バンド模型におけるBCSハミルトニアンの超伝導転移温度について調べた。その結果、平坦バンドをもつようなBCS模型では、従来のBCS理論で得られる結果とは異なり、超伝導転移温度が、デバイエネルギーによらず平坦バンド内の引力に比例することが分かった。これによって、従来のBCS超伝導体における「軽い元素を用いてデバイエネルギーを高くすると転移温度も高くなる」という設計指針上の制約が取り払われ、物質設計の自由度が高くなる。さらに、超伝導転移温度がデバイエネルギーによる制限を超えた非常に高い値をとる可能性もある。
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