研究課題
ダイヤモンドは、半導体に起こる新しい超伝導である。純粋なダイヤモンドは、5.5eVの大きなバンドギャップを持つ絶縁体である。そこへ硼素をドープしていくと半導体となり、さらに硼素を増加させると、約3e20/cm3で金属-絶縁体転移を起こすことが分かってきた。さらに硼素をドープしていくと、やがて超伝導が出現し、硼素量の増加に伴って超伝導転移温度も増加する。現在では、最も高い超伝導転移温度は、Tc onset=11.4Kとなり、10Kを超えたことは、冷凍機冷却で達成できる点で大変価値がある。ダイヤモンドの超伝導は、半導体に起こる新しいタイプの超伝導であるため、その発現機構の解明が求められている。その上で、ダイヤモンド超伝導体の電子状態を理解することは、急務である。我々は、ホモエピタキシャル薄膜を合成し、軟エックス線角度分解光電子分光法により、ダイヤモンド超伝導体のバンド構造を明らかにすることに成功した。これによると、基本的なバンド構造は、純粋なダイヤモンドとよく一致した。キャリア濃度が増すに従い、フェルミ面が降下し、金属-絶縁体転移を上回ると、フェルミ面がダイヤモンドバンドのトップを切るようになり、ダイヤモンドバンドにホールがドープされていることが分かった。このことは、ダイヤモンドのバンドが、超伝導の発現に深い関わりを持つことを示している。この結果は、Nature誌に掲載された。さらに、これらの結果を元に、硼素による乱雑さを取り除くと、超伝導転移温度が急激に増加する可能性が示唆されている。最後に、2005年12月につくば市において、ダイヤモンド超伝導体と関連物質の国際ワークショップを主催した。ダイヤモンド超伝導の研究者が一同に会し、大変活発な議論が行われ、大きな成果をあげた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (5件)
NATURE (7068) 438
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