研究支援者として1名の大学院生と協力を行い、研究代表者1名が中心となり研究を実施した。本年度、当該大学院生が大学院研究科RAとして雇用されたため、予定していた研究支援(謝金)は行わず、謝金分は申請時に計上していたが、付時の減額のため削減された予算案に従い使用した。 本年度の主な研究実績・状況は以下の通りである。 1、研究代表者は、24th International Conference of Low Temperature Physicsに出席し、乱れた電子系・量子カオス系の有効場理論(超行列非線型シグマ模型)が、等エネルギー面上における場の理論のもつ代数構造と量子位相の関係、特にある種のボゾン化法とみなし得ることを報告した。 2、投稿済論文へコメントから、導いた代数構造(カレント代数)とその有効場理論との対応の一意性に関しての指摘があり、現在改訂を行っている。ただし物理的に常識的なFock空間を表現空間として使う限り結論に変更はない。 3、等エネルギー面上の古典軌道の幾何学的性質と応答との関係について調べたところ、半古典論を越えた量子効果を議論するためには、量子干渉・位相効果を軌道や波動関数に付随するものと考えるよりも、むしろ、等エネルギー面という射影された空間の状態空間の幾何やその随伴表現であるオペレータ間の代数構造(カレント代数)を調べるべき、との認識に達した。現在研究を継続中である。 4、等エネルギー面上の場の理論を多体系に適用する場合、等エネルギー面上への射影操作が問題になる。平均場近似でスペクトルHusimi関数を求めると、動的平均場と等価になる。この時点で超対称化するとアンダーソン局在を支配する位相自由度を導入することができる。ただし多体系をはじめから超対称化することは現在できないため、この位相自由度の意味は明らかではなく、研究を継続中である。
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