【平成18年度の研究実績の概要】 研究代表者1名が中心となり、研究支援者として2名の大学院学生と協力し、研究を実施した。当該大学院生は大学院研究科RAとして一定期間雇用されたため、謝金による研究支援は当初予定よりも少額になり、その分を研究協力者の研究環境(計算機環境)の改善に使用した。 本年度の研究実績・実施状況は以下の通りである。 1.研究代表者は国際集会Quantum Mechanics and Chaos(2006年9月大阪市立大)に出席し「等エネルギー面上の場の理論」を特徴づけるスペクトル代数が、相互作用の存在によりいかに繰り込まれるかを報告した。また米国物理学会マーチミーティング(2007年3月、デンバー)に出席し、最新動向を調べるとともに関連分野の研究者と議論を行った。 2.アンダーソン模型に対し、フロー方程式(連続ユリタリ変換)による繰り込み手法を詳細に検討したが、計算手順が煩雑な割に他の手法に対する明確な優位性がみられなかった。 3.場の演算子の「軌道」とはHeisenberg演算子であり、等エネルギー面上の場の理論とは、準粒子として適切な場の演算子を再定義することに他ならないことが明確となった。そのため、運動方程式より(近似的に)準粒子場を導入する雛形としてアンダーソン模型の運動方程式による近似の再検討が有意義と考えた。具体的な問題として、複合ナノ構造量子ドット系に対し改良された運動方程式の自己無撞着近似法により量子輸送特性を調べ、その結果を日本物理学会(2007年3月)で報告した。今後、これらの改良型運動方程式の近似法の考え方と等エネルギー面上のスペクトル代数との関連を詳しく検討していく予定である。
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