研究課題
摩擦すべり不安定性を記述する構成則として、すべり弱化則とすべり速度・状態変数依存則がよく知られている。特に後者は1mm/s以下の遅いすべり速度での実験から導かれたものである。一般に、すべり面の真の接触面積は見掛けの接触面積の数%程度であるから、アスペリティーでの応力は平均的な応力の数十倍になる。したがって、標準的な地震のすべり速度1m/sでは、ごくわずかにすべっただけでアスペリティーは溶融温度に達してしまう(flash melting)。このことから、地震性摩擦すべりは必然的に摩擦熱に支配されることになるが、従来の摩擦構成則にはこの効果が組み込まれていない。本研究では、今年度は以下の2つの研究を行った。摩擦工学分野の研究成果を整理すると、法線応力Pとすべり速度Vとの積が摩擦機構を支配していて、PVが大きくなるにつれて、flash meltingからpartial meltingへ、さらに大きくなるとfull meltingに移行する。Flash meltingでは摩擦係数が小さく速度弱化を示し、partial meltingでは摩擦係数と磨耗速度が異常に大きくなり、full meltingでは再び摩擦係数が小さくなる。そこで、固着すべり実験を行い、すべり量、軸荷重等の計測データと実験後のすべり面の微小構造とを比較することを試みた。摩擦係数が一時的に大きくなる時刻までのすべり量とすべり面のSEM観察によるpartial meltingに達するまでのすべり距離がほとんど一致することから、上記の摩擦すべり機構の変化を確認することが出来た。成果はTectonophysicsに投稿準備中。ガウジ層を伴う摩擦発熱の数値実験を行った。せん断応力、すべり速度、およびガウジ層の厚さ(いずれもSI単位)の積が約5x10^4より大きければ、ガウジ層内はほぼ断熱的であるとみなしてよいこと、地震断層の標準的なすべり速度とせん断応力の範囲内では、摩擦溶融に至るすべり時間が最小になるのは、ガウジ層の厚さが0.5mm程度であることを明らかにした。後者はシュードタキライトの厚さが3mm以下であることと関係しそうである。
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