回転電磁流体において、外部磁場(外から与える磁場:一定)と系の回転が同じ方向の場合に存在しうる境界層を系統的に分類した。また、境界層適合条件が存在するか否かを判定するために、これらの境界層を形成するために要する時間を見積もった。これによると、核-マントル境界付近で重要であると考えられる境界層は数日程度で形成され、核内部の流れの時間変化(数年以上と考えられている)と比べると十分短い。従って、核内部の流れからみれば境界層は一瞬にして形成されることになり、境界層適合条件が存在しうることがわかった。 核-マントル境界に相当する液体-固体境界付近に、1-10km程度の小スケール浮力が存在する時の流れを、外部磁場の影響が非常に小さい(すなわち、ローレンツ力が非常に弱い)場合について、境界層適合条件を用いずに解析的に求めた(パリ地球物理学研究所A.Chulliatおよびフロリダ州立大学D.Loperとの共同研究)。これは境界層適合条件を用いた場合と比較するための準備であり、この比較は次年度早期に行う。 本年度に計画していた上記研究に加えて、境界層適合条件の地球ダイナモモデリングへの応用可能性に関する一般的な考察を行った。当初から念頭にあった境界層が形成されるために要する時間に加えて、境界層の流体力学的安定性、特に、境界層外部の流れがゆるやかに時間変化する場合の安定性が地球ダイナモモデリングに応用する時には重要であることがわかった。これに伴い、エクマン・ハートマン境界層の安定性の解析に着手したが、未だ十分な成果は得られていない。
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