氷床変動が内核-外核-マントルの差分回転を介してダイナモ作用に影響を与えるのではないかと考え、外核境界での電磁トルクと、マントル・内核の粘性率を考慮した地球回転変動の研究を行ってきている。差分回転はオイラー方程式を解くことにより求まる。この研究の目的は千年より長いスケールでの地球回転変動を評価することである。 この研究を遂行する過程で非常に面白い結果を得た。つまり、境界での摩擦トルクの有無にかかわらず、マントルに対する外核と内核のEquatorial Rotation(地球全体の場合、極移動に相当)に、ほぼ周期200年の脈動が存在することを数値的に見いだした。この脈動の振幅はコア・マントル境界(CMB)でのトルクの大きさ(マントル下部の電気伝導度やCMBでの地球磁場の強度による)や下部マントルの粘性率によるが、周期はこれらの値によらない。又、Axial Rotation(地球全体では自転速度の変化に相当)は、摩擦トルクを介してEquatorial Rotationとカップリングし、周期25年程度で振幅が2ミリ秒位のパルス的変動が見られた。これらはカオス的な変動を示している。特に、脈動は摩擦トルクの有無にかかわらず存在することから、差分回転を支配するオイラー方程式の中に、カオス的な脈動を生起する性質があるのではないかと考えている。 本年度は、本年度購入したコンピューターで上記のモデルを再計算し、これらの脈動を再確認し、モデル及び計算結果にについて国際誌に投稿した。その結果、下記の研究発表に記した雑誌に2006年に掲載された。本論文を仕上げるのと平行して、カオス的な変動が現れやすいforcing項の弱い期間のモデル計算を種々のパラメータを変化させて行っている。
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