研究概要 |
レーザーアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)フィッショントラック法により,ジルコン結晶中のウラニウム濃度を正確に測定するためには,LAの際に内標準元素であるジルコニウムとウラニウムの間でおこる元素分別作用を除去する必要がある.この問題を解決するには,ジルコンを標準物質にすることによって標準物質とジルコン未知試料との間の元素分別作用を最小にすることが出来る.ジルコン標準物質は,濃度分布が均一なものがないので,フィッショントラック法によって粒子全体のウラン濃度を求め,その中で比較的均質なものを選んでグリッドメッシュを設定し,メッシュ交点のウラン濃度をLA-ICP-MS法で測定した.その結果から,標準試料表面のウラン濃度マップを作成した.このマップにしたがい,年代測定の際に標準試料測定点の濃度を用いて未知試料を測定することにより,正確な年代測定を可能にする.ベトナム産の宝石グレードジルマン結晶を京都フィッショントラック社から提供を受け,マイカ検出板法を用いて放射化してフィッショントラック法でウラニウム濃度を決定した.さらに上記の方法を用いてウラニウム濃度マップを作成した.このマッピングをもとに試験的に年代既知のジルコン試料のウラン濃度測定を実施し,その後エッチングをほどこして自発トラックを係数して年代測定を行い年代を求め,従来のフィッショントラック法で得られた年代値と比較した.その結果,既報年代値との偏差5-10%で年代値を得ることが出来た.これにより,均質性の高いジルコン標準物質が得られれば,LA-ICPMSフィッショントラック年代測定法が実用化できる見通しが立った.関連して,LA-ICP-MS法の定量再現性を検討した論文を出版した.
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