大分県姫島村に産出する流紋岩について次のことがわかった。1)偏光顕微鏡観察の結果、石基の針状の結晶は流理構造に平衡に配列している。斑晶鉱物は角閃石・斜長石、石基鉱物は斜長石・黒雲母である。 2)偏光顕微鏡観察の結果、流理構造において、白縞には気泡が多く、黒縞には気泡が少ない。また、気泡は、磁鉄鉱・ガラス・ウラン鉱物などの小片からなる集合体で埋められている。 3)流理構造の間には、黒曜岩に似た岩石「黒曜岩様流紋岩」がレンズ状に挟まれている。この黒曜岩様流紋岩と流紋岩との境界はパーライト状の産状を示す。黒曜岩様流紋岩の石基結晶は針状で、同じ向きに定向配列している。また、黒曜岩様流紋岩には斑晶として硬石膏が存在し、流紋岩には存在しない。 4)流理構造のコントラストと化学組成の違いを明らかにするために、XRFによって全岩化学組成を分析した。その結果、ほとんどの主要元素に違いがあることが判った。特に、鉄は黒縞、灰色縞、白縞の順に少ないことが判った。 5)マルチフラクタル解析を行なった結果、流紋岩の流理構造にはマルチフラクタル性が存在し、その性質は、試料によらずほぼ共通であることがわかった。 6)以上の事実から、次の様な流理構造形成モデルを提案した。マグマだまりでのマグマの発泡およびそれに続く気泡の浮力による移動によって単純な層構造(気泡存在度の不均一構造)が形成される。その成層構造形成過程では、気泡の運動と伴に、元素の移動が起こり、化学組成の不均一構造も同時に形成される。この単純な層構造のマグマが、火道を上昇する際に、繰り返し変形を受けて流理構造が発達した。
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