研究課題/領域番号 |
17654108
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐野 有司 東京大学, 海洋研究所, 教授 (50162524)
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研究分担者 |
天川 裕史 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (60260519)
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キーワード | 二次イオン質量分析計 / ナノ・シムス / 局所分析 / 古海洋環境 / 有孔虫 / 貝 / Sr / Ca比 / Mg / Ca比 |
研究概要 |
本研究は先ず、二次イオン質量分析計(SIMS)による生物起源炭酸塩(炭酸カルシウム)試料中の微量元素の測定の可能性から検討を始めた。具体的には有孔虫、貝試料中の微量元素の二次元的なマッピングをSIMSとEPMAを併用し行った。特に、マグネシウム(Mg)とストロンチウム(Sr)両元素に注目した。この両元素は生物起源炭酸塩試料中への取り込み量に温度依存性があることが指摘されており、古海洋学的な見地から大変注目を集めている。 有孔虫試料(Pelleneria obliquiloculata)の分析を行ったところ、Sr/Ca比およびMg/Ca比が高い部位が帯状に存在することが分かった。この結果から、SIMSによって同一殻中の詳細な濃度分布を描くことが可能であることが確認された。さらに、クマシー・ブリリアント・ブルー(CCB)によるタンパク質の染色結果と比較すると、染色される部位は濃度比が高くなっている部位とほぼ一致した。従って、SrおよびMgはCaに比べ優先的にタンパク質と結合し殻の中に存在しているものと考えられる。また、他の有孔虫(Globorotalia menardii)をEPMAで分析したところ、SrおよびMgは同様の帯状の分布を示した。さらにこの試料では、同じ部位に硫黄(S)の濃縮も認められた。 Sと、SrおよびMg(Sr/Ca比、Mg/Ca比)が似た分布を示す傾向は、シンカイヒバリガイの殻にもSIMSとEPMAを併用した測定結果から認められた。この場合も、有機物が多く存在する部位とSr/Ca比、Mg/Ca比が高い部位はほぼ一致している。 SIMSを用いた以上の結果から、Sあるいは有機物を多く含む有孔虫や貝試料の部位にSrやMgが濃縮していることが分かった。
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