研究概要 |
酸素は地球および惑星の主要な構成元素であり、その同位体組成の変動は隕石等の地球外物質や地球上の多様な岩石の起源、岩石-水相互作用、風化過程、水循環、大気循環など、地球化学的諸問題の解明に広く用いられている。安定同位体地球化学の分野では、ある物質の酸素同位体組成(^<18>O/^<16>O比)はδ^<18>O値として表現される。水の酸素同位体比を質量分析する場合、通常、試料水と同位体交換平衡にあるCO_2を用いる。SMOWを含む水の酸素同位体比は平衡にあるCO_2の酸素同位体比を交換平衡定数で除したものとなる。一方、岩石・鉱物の酸素同位体比は、何らかの方法で試料から酸素を抽出した後、O_2またはCO_2の形で質量分析される。この同位体比を水であるSMOWを標準として表示しようとすると、上に述べたH_2O-CO_2間の同位体交換平衡定数が介在することになる。この同位体交換平衡定数は古くから多くの研究者により実験的に求められているものの結果は0.5‰程度の不確かさがある。本研究ではこの「不確かさ」を精密な実験により最小化することを目的とした。 本研究では、研究代表者が管理するケイ酸塩酸素同位体比測定システムを用いて、反応容器中に置かれた鉱物ならびに水試料をBrF_5雰囲気下でレーザー加熱により分解し、O_2のみを抽出・精製し、その酸素同位体比を質量分析計により測定した。本研究では国際標準水試料であるVSMOW,SLAP,GISPおよびを国際標準鉱物試料であるNBS28 quartz, NBS30 biotite, UWG2 garnet等をO_2化し、それらの同位体比分析を行なった。その結果、NBS28 quartzのδ^<18>O値は9.2‰、H_2O-CO_2の酸素同位体比交換平衡定数は1.0407であることが分かった。これらの結果は、国際(2005 Goldschmidt Conf.)および国内学会(質量分析学会・同位体比部会)等で発表した。また論文としてまとめ、現在、投稿中である。
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