液中放電に対して、今年度は液体と電極界面の現象に注目し、この効果は100μm〜1mmの微小な電極間隔において特に顕著な影響が現れるという仮説のもとに、電解質溶液を用いて電極反応を実験的に調べた。電解質に硫酸ナトリウムを用い、電気化学分野で標準的な計測法であるサイクリックボルタンメトリー法を適用した。ファンクションジェネレータにより0から5Vまで変化する三角波電圧を印加し、溶液の濃度、電極間距離、周波数を変えて、白金電極間の電圧・電流特性を調べた。電圧の上昇とともに、まず電極表面付近に電気二重層が形成されるため充電電流が流れる。さらに電圧を上昇させると水素と酸素が発生するファラデー電流が流れる。三角波の周期を1Hz程度とすると充電電流の変化は、電圧上昇時と下降時では同一とならずヒステリシス特性が現れた。この電流変化の幅は電極間隔を大きくするとわずかとなり、微小な電極間隔において初めて観測されたものである。この電圧・電流特性の観測から電極界面のイオンの挙動を推定できる可能性を見いだした。また、三角波の周波数を上げていくと、水の電気分解が通常起こる電圧以上においても電極反応が起きにくい現象が見られた。これは、水分子の分極による影響と考えられ、周波数によって分極の制御が可能であることを示している。すなわち、水の電気分解が生じない電圧の範囲である安定領域を拡大することができることを意味している。この現象は電極間隔を微小にすることや溶液の濃度をある程度以上に高くすると発生しやすい。電解質溶液中の界面付近における陽イオンと陰イオンの挙動は、プラズマ中の正イオンと電子との挙動に単純には対応できないことが分かった。今後、電極界面に薄い気体層あるいは放電領域を形成させ、薄膜形成を中心とするプラズマ化学への応用を目指す。
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