レーザー光の波長を精密に測るのに、鏡の間の距離(共振器長)を一定に保った干渉計(エタロン)を用いる。一般に、エタロンの共振器長は、温度や空気密度の変化、設置台の振動などによって常にゆらいでいる。そのため、従来は波長を一定に安定化させたレーザー光と圧電素子によって位置を変えることができる鏡を用いて、ゆらぎを相殺するシステムを構成して共振器長を一定に保持してレーザー光の波長計測を行ってきた。本研究では、まずその安定性をさらに向上して精度を高め、0.0001cm-1の誤差の範囲内で光の波長を計測できるようになった。しかし、本研究の最大の目的は温度や空気密度の変化の影響をほとんど受けない、すなわち、外部条件の変化による共振器長のゆらぎを極めて小さくしたエタロンを設計開発することであり、低熱膨張率素材と高真空槽を用いたシステムを一通り完成させた。共振器長の安定性を検査したところ、1時間の間では、そのゆらぎの大きさは上述の誤差範囲内に収まっていることがわかった。高精度レーザー分子分光に応用するためには、1日、1週間、1か月の間でこれを保つ必要があり、今後さらに検査を長時間続行し、安定性を向上させる予定である。それが実現できたら、複雑な安定化機構なしで共振器長が長時間一定のエタロンを完成することができ、"レーザー光用メートル原器"として広い応用が可能となるので、これを次年度の計画とする。
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