1.装置の製作 電子増幅型CCD検出器およびイメージ分光器を組み合わせて、高感度の検出系を製作した。また、内径300マイクロメータのガラス毛細管を用いて、フローセルを製作した。ここに、フェムトMレベルの濃度の試料を流し、レーザー照射体積内の分子数を、たかだか1個にすることで一分子検出を行った。試料からの蛍光を、焦点距離50ミリのレンズで集め、共焦点の位置に置いたXYスリットで不要な光をブロックした。スリットを通過した光を、同じく焦点距離50ミリのレンズで像を1/3倍に縮小し、イメージ分光器の入口スリット上に収光した。 2.検出器の時間分解能 周期的な変調を加えたレーザー光強度を測定することによって、検出器の時間分解能を調べた。変調周波数から求めた、1ピクセルあたりの時間幅と、露光時間および電荷転送時間から予想される時間を比較したところ、常に36マイクロ秒のずれがあることがわかった。このずれの原因は現在調査中である。 3.一分子検出法のテスト 蛍光ビーズ溶液に対して、上記の測定システムを用いて一分子(一粒子)検出のテスト実験を行った。蛍光ビーズ水溶液では、時間トレースに時々バンドが観測されたのに対して、蒸留水では、そのようなバンドはまったく観測されなかった。このことから、観測されたバンドは蛍光ビーズによると帰属した。観測されたバンドの出現頻度を、濃度を変えて、数えたところ、出現頻度は濃度に比例することがわかった。また、バンドの強度は、濃度によらずほぼ一定であった。これらのことは、蛍光ビーズ1個ずつからの蛍光を観測していることを意味している。 これまでテスト測定の結果から、本方法によって、一分子の蛍光スペクトルを、マイクロ秒の時間分解能で検出することができるという見通しがたった。今後は、背景光の除去、蛍光の集光効率の向上を図り、蛍光分子の一分子測定を行う予定である。
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