研究概要 |
申請者は本課題の中で「動的シクロファン」という概念を提案した。これは、外部刺激によってシクロファンの持つ歪みや骨格構造に摂動を与え、それに付随する渡環相互作用の変化やシクロファンに特徴的な物性値変化を応答出力として取り出すというユニークな試みである。昨年は、応答型レセプター機能を持つシクロファンについての検討を行い、分子内に2つのテレフタルアミド骨格を持ち,これらが二組の1,4-ビス(フェニルエチニル)ベンゼン発色団でで架橋された大環状シクロファンについて、不斉なゲストを錯形成させた時、ゲストのエナンチオマーの一方はねじれ構造への変形を引き起こすが、その鏡像体との錯形成ではホストは長方形の構造のままで変形が誘起されないという興味深い結果を得ている。今年は、1)シクロファン構造の一部を切った非環状めモデル化合物についての検討を行い、そのものでも円二色性(CD)スペクトルの違いで不斉点の立体化学を含めたセンシングが可能であることを見いだした。また、これとは別に、2)非環状構造の末端にアミド基を導入し、その水素結合によってシクロファン構造が形成される応答性分子の検討を行なった。アミド基上に不斉点を導入することで骨格のねじれ構造の方向を制御することで、CDスペクトルでの大きな変化を誘起できた。電気化学応答と合わせ、3重入力-4重出力型の応答機能を引き出すことに成功している。3)末端に不斉点を導入して骨格構造のねじれを誘起する研究をさらに発展させることで、長波長部にΔεで数百という巨大なCD強度を発生させることに成功した。その論文発表の際は、研究内容を紹介する図がTetrahedron Lettersの表紙として採用されるなど、大きな反響を呼んだ。
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