ポリシランは多数のケイ素原子が連結した主鎖と有機置換基の側鎖からなる高分子である。ポリシランの物性はその主鎖骨格の立体構造(コンホメーション)に依存して変化する。ポリシランの骨格は、柔軟であり、温度や電場など外部環境によって容易に変化するため、高感度センサーへの応用が期待されている。本研究では、光機能性材料への本格的な応用に向けて、ポリシランの性質を簡便に改善する技術を確立するため、界面活性剤によって形成されるミセルや包接ホスト分子によりポリシランの周囲を取り囲み、外部から分子運動や配座の制御を行う。この目的を達成するためには、ポリシランのモデル化合物として低分子量のオリゴシラン(ケイ素数10個程度)について検討する必要がある。昨年度の研究で、界面活性機能を有すると期待されるオリゴシランとして、親水性のポリエーテル鎖(トリエリレンオキシド鎖)でペルメチルデカシランの片末端および両末端を置換した両親媒性デカシラン(1aおよび1b)の合成を行った。本年度の研究では、これらのデカシランの水溶液中での挙動を検討した。ヘキサン中では1aおよび1bは親水基を持たないペルメチルデカシラン(2)と全く同じ紫外吸収を示したが、水溶液中では、非常に鋭い吸収に変化した。これは、これらの両親媒性デカシランが水溶液中では二分子膜状あるいは単分子膜状に自己会合し、その膜のなかで高度に制御された主鎖構造を持つようになったためと考えられる。
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