研究課題
ケイ素などの第3周期以降の高周期典型元素におけるπ電子系化合物(多重結合化合物)は炭素などの第2周期元素π電子系化合物に比べ、占有π軌道準位が著しく高く、非占有π*軌道準位が著しく低いという特徴を持つ。またケイ素-ケイ素σ結合(単結合)の軌道準位は炭素-炭素π軌道準位に匹敵するほど高く、ケイ素-ケイ素単結合で連なったポリマー(ポリシラン)では主鎖を形成するσ電子が、炭素π共役系におけるπ電子のように非局在化するσ共役を発現することも知られている。従って、ポリアセチレンのケイ素類縁体であるポリジシリンでは、高周期元素特有の非局在化したσ電子によるσ共役に加えてπ共役の複合化による新規な物性発現も期待される。本研究では、筆者らが初めて安定な化合物として合成・単離することに成功したケイ素-ケイ素三重結合化合物(ジシリン)の反応性を検討してきた。有機リチウム開始剤によるアニオン重合を行うべく、種々の有機リチウム試剤との反応を行ったところ、tert-ブチルリチウムでは1電子移動とそれに引き続く水素移動を経て、水素置換ジシレニルリチウム種を与え、単独重合は進行しなかった。また、ジシリンの重合活性の向上を目指して新規な置換基を導入したモノマー(ジシリン)の合成検討を行った。その結果、ジアルキル(アリール)シリル基を導入したジシリンは、spケイ素が空間的に接近するアリール基に対して反応活性であり、spケイ素が空間的に接近するアリールC-H結合へ挿入を経て異性化するため、ジシリン自体を安定に単離することが出来なかった。一方、トリアルキルシリル基を導入した第2のジシリンを安定に合成することには成功し、その分子構造を単結晶X線結晶構造解析で決定した。
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http://nao.chem.tsukuba.ac.jp/sekiguch/index.html