研究課題/領域番号 |
17655019
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 物質科学教育研究センター, 教授 (40221197)
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研究分担者 |
長谷川 靖哉 奈良先端科学技術大学院大学, 物質科学教育研究センター, 助教授 (80324797)
中嶋 琢也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助手 (70379543)
内藤 昌信 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助手 (30346316)
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キーワード | 円偏光性発光 / 光学活性 / ビナフチル / ペリレン / 円二色性 / エキシトンカップリング |
研究概要 |
円偏光性発光(CPL)とは光学活性分子から発せられる右円偏光成分と左円偏光成分の強度の異なる発光のことを指す。CPLは従来、励起状態における分子構造の評価に利用されてきたが、近年では、高輝度液晶ディスプレイ用の偏光光源をはじめとして、3次元ディスプレイ、記憶材料、光通信など高度な光情報プロセッシングへの応用が期待されている。これまで円偏光蛍光(CPL)測定の標準物質として、円二色性と同じくカンファースルホン酸誘導体が用いられてきたが、蛍光強度が低く測定には不向きであった。本研究では、光学活性なフルオロフォアからなる高特性の円偏光性発光材料の開発を行った。 今年度は高い蛍光量子収率ならびに高い円二色性を有する新たなCPL標準物質となり得るキラル化合物として、キラル軸を有するビナフチルユニットに蛍光性ペリレンを結合させたビナフチルペリレンダイマーを合成した。この分子についてCD・CPLスペクトルをはじめ、時間分解蛍光、蛍光量子収率などの光学特性を検討した。合成した化合物は545nm付近にペリレンユニットに対応する強い蛍光を示し、蛍光量子収率は88%、蛍光寿命は3.4nsecであった。これらは光学活性部位を有さないジアルキルペリレンビスカルボキシジイミド(DPI)とほぼ一致した。CPL測定の結果、CD測定の異方性因子(|g_<CD>|=0.39%,531nm)よりも大きな偏光異方性因子(|g_<lum>|=2%,545nm)を有することが確認された。励起状態構造が基底状態の構造と異なることを示唆している。DPIとの蛍光量子収率・蛍光寿命の比較より、ビナフチルペリレンダイマーの放射速度定数は10%程度小さいと推定された。発光・吸収波長の長波長シフトや高い円二色性などは、いずれもエキシトンカップリングにより説明される。
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