研究概要 |
ポルフィリンの異性体であるN-混乱ポルフィリン(NCP)の発見によって端緒が開かれた、「混乱ポルフィリノイドの化学」は、拡張ポルフィリン系において、金属配位を容易にする配置をとるなど、きわめて構造的特性があることが明らかになっている。そこで、ヘキサフィリンに焦点を当て、周辺部の修飾及び、骨格合成ルートの再検討を行い、種々の混乱型ヘキサフィリンを簡便に得る方法を開発するとともに、それらの金属錯体を合成し、物性を検討した。まず、エチニル基を導入することにより、近赤外吸収、発光の波長を超波長側にシフトさせることに成功した。また、混乱ピロールの外周炭素部位に、アセチルアセトナート基を付加させることに成功し、その結晶構造解析の結果、分子が平面性を保持していることが明らかとなった。このアセチルアセトナート基で修飾されたヘキサフィリンは、熱や光に対する安定性が著しく増大し、また、銅(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、パラジウム(II),亜鉛(II)といった金属イオンとも容易に錯体を作ることから、今後の触媒作用検討に使用できると考えている。また、ビスコバルト錯体の配位能力を検討したところ、ポルフィリン同様に、軸配位が可能なことがわかり、この錯体を用いた触媒反応を設計する上での指針を得ることができた。 一方、さらなる長波長発光化を目指し、1500nm付近に発光能を持つ、エルビウム(Er)イオンの錯化を試みたところ、錯化が進行することがマススペクトルで確認された。しかし錯体の安定性が悪く、単離するまでにはいたらなかった。
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