これまでのオーロフィリシティー及びAuクラスター研究から得られたクラスター空間場の構築に関する新たな合成経路を探索することを目的として、新規Au-Agヘテロ金属クラスターの合成法に関する研究を行った。本年度成果として、無機銀塩を用いて得られた19核及び25核Au-Agヘテロ金属クラスターに関してX線構造解析を行うことに成功し、その金属クラスター構造についての興味深いいくつかの知見が得られた。(第55回錯体化学討論会発表)その一つとして、これまで報告例の無い無機銀塩を用いた25核ヘテロ金属クラスターとして[Au_<13>Ag_<12>(PMe_2Ph)_<10>(NO_3)_9]の合成及び単離に成功し、ヘテロ金属クラスターの新たな合成経路を示すことができたことが挙げられる。更に、19核Au-Agヘテロ金属クラスターに関しては、合成条件として硝酸銀の比率を変えることにより二つの19核Au-Agヘテロ金属クラスター[Au_<12>Ag_7(PMe_2Ph)_<10>(NO_3)_9]と[Au_<17>Ag_2(PMe_2Ph)_<10>(NO_3)_9]の2種類を得ることができた。この19核Au-Agヘテロ金属クラスターの存在はこれまでのAu金属クラスター群の生成メカニズムでは考慮されていない新たな金属クラスターの核数であり、19核クラスターを単離し、構造決定できたこと自体が特筆すべき成果である。 研究者は、同時にルテニウム-金クラスター系に関する研究より新たなRu2Au1タイプの金属錯体の合成に成功し、以前報告した超分子錯体群に発現する新たな高次構造の可能性を示唆することができた。(第55回錯体化学討論会シンポジウム講演及びPACIFICHEM2005発表)次なる段階としては電子移動等の相互作用を引き起こす超分子錯体の合成を進め、光化学測定及び電気化学測定より光応答性導電素子としての可能性を明らかにする予定である。
|