本研究ではキャピラリー電気泳動法を利用し、様々な共存物を含む試料中の目的タンパク質を短時間で分離し、特異的かつ高感度に検出できる新しい手法を開発する。この方法を実現するために、キャピラリーに二つの検出窓を設け、その間に抗体を固定化した磁性粒子を磁石により保持して、電気泳動を行った。抗体ウサギIgGを固定化した磁性粒子をキャピラリー内に保持し、ウサギIgGを試料として電気泳動を行ったところ、1点目の検出部で検出されたウサギIgGは磁性粒子重点部分を通過する際に、磁性粒子と結合し、2点目の検出部では検出されないことがわかった。そこでさらに、抗カルボニックアンヒドラーゼを固定化した磁性粒子をキャピラリー内に充填し、カルボニックアンヒドラーゼとラクトアルブミンを含む混合試料を電気泳動により分離した。このとき、1点目の検出部ではカルボニックアンヒドラーゼとラクトアルブミンは二つのピークとして観測することができた。一方、磁性粒子充填部を通過した後の2点目の検出部では、カルボニックアンヒドラーゼのピークは完全に消失し、ラクトアルブミンのピークのみが検出された。この結果はカルボニックアンヒドラーゼが充填された磁性粒子上の抗体と特異的に反応して補足されたのに対し、ラクトアルブミンは抗体とは反応せず磁性粒子充填部を通過したものと考えられる。この結果はキャピラリー電気泳動により、ウエスタンブロッティングと類似した結果を得ることが可能であることを示す。また、本手法によれば、電気泳動の分離過程において、特定のタンパク質のみを特異的に補足することが可能であることがわかった。本手法は電気泳動図から目的タンパク質を同定できるだけでなく、磁性粒子を回収することで、補足されたタンパク質を二次分析に利用できる可能性があり、今後の発展が期待できる。さらにゲル電気泳動と組み合わせた手法について、現在検討中である。
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