研究概要 |
陰イオンの水溶性ポルフィリン、テトラキス(4-スルホナトフェニル)ポルフィリンH_2TPPS^4,は酸性では自己集積したJ-集合体を生成する。ポルフィリン自身には光学活性を示さないが、J-集合体は光学活性となる。更に、中性高分子や中性界面活性剤を加えると、光学活性が反転した。種々の化合物共存下でH_4TPPS^2 J-会合体の光学活性能の変化について、UV/Vis、蛍光及びCDスペクトルの測定より研究した。次の結果を得た。ポルフィリンJ-集合体は490と706nmに吸収極大を、716nmに蛍光強度の極大値を示した。CDスペクトルは490nmを中心にして、長波長側が正の、短波長側に負のコットン効果を示した。420nm付近にも同様のコットン効果が観測された。 J-会合体に中性界面活性剤(Triton-X,100)やポリエチレングリコールを加えると、吸収スペクトルは濃度の増大とともに大きな変化が見られなかった。しかし、CDスペクトルは、反転した。濃度および分子量の増大ともに反転したCDスペクトルの強度が増大した。 陽イオン性界面活性剤(CTAB)を加えると、CDスペクトルの強度が消え、H_2TPPS^4のモノマーのUV/Visスペクトルを示した。 陰イオン性界面活性剤はH_4TPPS^2 J-会合体と反応せず、スペクトルの変化は見られなかった。 酒石酸を加えると、L(-)のときに反転が起こった。D(+)のときはCDスペクトルの強度が増大するだけであった。 以上の結果に基づいて、J-集合体の光学活性反転の機構について考察した。
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