研究課題
本研究の目的は、単分子では光学活性を示さないポルフィリン溶液に界面活性剤を添加して、光学活性を自在に制御したポルフィリン集合体を簡単に水溶液中で創ること、並びに、このポルフィリン集合体を用いる小分子から高分子までの新しい分子認識分析法を確立することである。18年度の研究の結果次のことが明らかになった。可視スペクトル 酸性ポルフィリン溶液のJ-会合体化が進むと434nm(酸型ポルフィリンモノマー)の吸光度が減少し、490nmの吸光度が増大する。この溶液にポリエチレングリコール(PG)を加えると490nmの吸光度は少し変化する。CDスペクトル 酸性ポルフィリン溶液を1日放置するとCDスペクトルが観測されるようになる。CDスペクトルはポルフィリン溶液の調製法(溶液の概拝方向)に依存しなかった。更に、この溶液にPGを加えると光学活性が反転した。PGの分子量の分子量が大きいほど反転した光学活性の強度は大きくなった。塩類の効果 J-会合体の生成はBa^<2+>>Mg^<2+>>Ca^<2+>>K^+>Na^+>Li^+の順に減少した。一方、CDスペクトル強度はLi^+>Na^+>K+>Ca^<2+>>Mg^<2+>の順に減少した。陰イオンの効果ClO_4^->Cl^->NO_3^-の順にポルフィリンの光学活性は減少した。光学活性化合物の効果 D(-)酒石酸を加えると、可視スペクトルの変化は小さいが、CDスペクトルの強度が100倍増大した。結論 (1)ポルフィリンのJ-会合体はほとんどがラセミ体であるが、2〜3%だけ光学活性を示す。(-)に偏っている。(2)その光学活性が共存存物質によって大きく変化する。中性界面活性剤(PG)の添加により、高分子へ水和が起こりポルフィリンへの水和が減少する。金属イオンは電荷が大きく、J-会合体と相互作用しやすいイオン。陰イオンは疎水性イオン。これらの結果を、ポルフィリン-フタロシアニン国際再会議で口頭発表した(イタリア、ローマ)。
すべて 2006
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