ターピリジン(terpy)を基体とするアミダイト試薬の大量合成、およびDNA自動合成装置を用いたterpyユニットのDNA主鎖骨格中への導入を行った。terpyユニットのカップリングには、装置のプログラムを変更して、通常のアミダイト試薬の約10倍の時間をかけた。合成したDNAコンジュゲートのハイブリダイゼーションは相補的なDNAと形成する二本鎖のステム部分にterpyを導入したもの、それに、2つのオリゴピリミジン鎖を繋ぐループ部分にterpyを導入し、相補的なプリン鎖との2分子間の三本鎖形成に関して検討した。 二本鎖のステムにterpyを導入すると二本鎖構造がかなり不安定化することがわかった。これは主鎖骨格中に柔らかい構造のterpyが挿入されることでヌクレオチドの連続性が途切れ、短い2つのDNAとしての振る舞いに近づいたためである。この系に金属イオンを添加すると二本鎖の熱安定性は若干向上することがわかった。terpyに金属イオンが配位したことで主鎖がある程度固定化されたため(エントロピー効果)と考えているが、詳細に議論するためには系をさらに最適化する必要がある。三本鎖のループにterpyを導入したコンジュゲートの三本鎖形成能は同じステム部分と(dT)_3ループを有するコントロールに比べて向上していることがわかった。また、この系に種々の金属イオンを添加した結果、特にCu^<2+>添加系において三本鎖構造の著しい不安定化が観測された。分子モデリングの結果、terpyユニットの全長はトランス構造(直線状)において約22Å。これは三本鎖の直径にちょうど合致する。terpyが金属イオンと錯生成し、シス構造をとるとこれが5Å程度以上短くなることが予測され、このために錯生成後は安定に三本鎖を形成することができなくなったものと考えられる。
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