研究概要 |
共会合高分子(Co-Associating Polymers)とは性質の異なる2種の会合基(A基,B基と記す)を有する水溶性高分子のことで,本研究課題のために創出した新専門用語であった.現在,共同研究者のF.M.Winnikのグループで新規に合成されている共会合高分子(アルキル鎖HM-と電気双極子Phosphorylcoline PC-)を側鎖として持つポリイソプロピルアクリルアミドHM-PC-PNIPAm)に具体的な目標を絞り,以下の理論予測を得た: 1.ゲルの網目骨格構造の反転現象(A架橋ゲルからB架橋ゲルへの転換) 溶媒(水とアセトン)の組成を変化させることにより,溶媒選択性を活用したゲルの連結構造が反転する現象について理論相図を導出した(田中).架橋による連結パスの相違により,A-ゲル,B-ゲル,A*B-ゲル,A/B-ゲルの4種が可能であるが,温度,高分子濃度,組成の3次元空間でこれらのゲル相がどのような位置に出現するかを相図の形でまとめた.また,バネ・ビーズ模型を用いた分子シミュレーションを行い,構造反転を起こすための分子設計(会合基の数と鎖上配置)の基礎原理を探求した(谷本・田中).これらの結果に基づいて,現在新規ポリマーが合成されている. 2.これら4種のゲルの構造転移をレオロジー測定で探知するため,架橋点の組み替えが起こるネットワークの複素弾性率の計算を行った.その結果,2段階ゲル弾性(寿命の長いA架橋ゲル中での寿命の短いB架橋点の生成消滅)が起こり,損失弾性率に2つのピークが生起することが分かった(印出井・田中). 3.共会合高分子のゲル化反応の詳細をカスケード理論に基づいて調べた.与えられた温度,濃度で会合物の分子量分布と平均分子量を求める一般的な理論を開発した(田中).
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