金属酸化物、および複合酸化物は現在ガスセンサや環境触媒など様々な分野で応用されており、近年更なる性能向上を目指し、金属酸化物ナノ粒子の調製が活発に研究されている。本研究では、極性有機溶媒中で金属塩とアルカリを反応させることにより、金属酸化物ナノ結晶が得られる新しい調製法について検討した。 まず、単独酸化物については、Zn、Mn、Sn、In、Fe、Laの酸化物を検討した。各種金属塩を溶解したトリエチレングリコールとテトラブチルアンモニウムヒドロキシドのトリエチレングリコール溶液を120℃で混合し、大気中にて250℃で12時間還流を行い、金属酸化物ナノ粒子を作製した。また、複合酸化物については、ペロブスカイト型酸化物であるLaFeO_3を検討した。LaとFe硝酸塩をトリエチレングリコールに溶解し、N_2流通下でテトラブチルアンモニウムヒドロキシドのトリエチレングリコール溶液と混合し、200℃で12時間還流することにより、前駆体ゾルを作製した。 Zn、Mn、Sn、In、Feについては、それぞれ結晶性酸化物が得られることがわかり、その結晶子径は1.3nm〜9.1nmと小さく、250℃において酸化物ナノ結晶が調製できることが確認された。しかし、Laに関してはアモルファスの酸化物として得られることがわかった。また、各酸化物の金属イオンの価数は、多くの場合出発原料の価数が生成物の価数に一致するが、Mnのように多価数を取りうる金属は有機溶媒中でも空気中の酸素との反応が起こることが明らかになった。これら酸化物は、ガスセンサをはじめとする機能材料に応用可能なナノ粒子であると考えられる。さらに複合酸化物では、還流後はアモルファスであったが、300℃で焼成すると、ペロブスカイト相が生成することがわかった。 種々の結晶性金属酸化物ナノ粒子を溶液中で調製できること、さらに複合酸化物を300℃という低温で作製できた例は少なく、この調製法は酸化物ナノ粒子を得る手法として大いに期待できる。
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