本研究はAFMプローブを活用し、糖鎖をナノスケールで配向固定化することを目的としている。糖鎖をナノサイズで基板上に固定化するために、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope IIIa)によるリソグラフィー技術を用いた。AFMのプローブに活性を維持した状態で糖転移酵素を固定化するため、糖転移酵素の1種であるガラクトース転移酵素は、タグとなるマルトース結合タンパク質(MBP)と共に発現したものを用いた。まず、酵素のMBP部位とAFMプローブを結合させるリンカー分子(マルトトリオース誘導体)を設計し合成した。リンカー分子は、片末端のマルトトリオースによりMBP部位と、もう片末端のチオール基を介して金コートされたAFMプローブ(NPG probe、Veeco)と結合する。酵素固定化までの各段階は、IR-RAS、MALDI-TOF MSやSPRにより確認した。 次に、アクセプターとなる糖を持つ基板を作製した。アクセプター糖となるN-アセチルグルコサミンをもつ糖脂質を合成し、自己組織化単分子膜(SAM)作成法により、金基板上に単分子膜とした。 作製した糖転移酵素固定化プローブを用いて、基板上での糖転移反応を行った。AFMフォースカーブ測定から、糖転移酵素-アクセプター糖鎖の間に大きな相互作用が観察された。一方、ネガティブコントロールとして用いた糖鎖提示のない基板と糖転移酵素間では、相互作用は見られなかった。このことから糖転移反応が基板上の任意のポイントで行えることを確認した。今後は、より広範囲に糖転移を行い、ナノスケールでのリソグラフ技術を実現する
|