セラソームは、細胞膜モテルとしてのリポソームの構造不安定性を克服するために、脂質二分子膜ベシクルの表面をシリカセラミックスの骨格で被覆した新規の人工細胞膜である。カチオン性の合成脂質から形成され、表面がゾル-ゲル反応によりセラミック(シリカ)架橋されたセラソームは、細胞がエンドサイトーシスでベクターを取り込むのに最適なウイルスサイズ(数十nm)の粒径をもち、遺伝子(プラスミド)と複合体を形成しても、膜融合による形態変化を起こさないことがわかった。これは、従来型のカチオン性リポソームでは遺伝子との複合化によって膜融合を起こしてサイズが増大するのと対照的である。その結果、HeLa細胞やHepG2細胞への遺伝子導入において、これまでのカチオン性リポソームに比べて100倍から1000倍もの極めて高い効率での遺伝子導入が可能になった。このセラソームは細胞毒性も低く、血清存在下でも使用可能であり、細胞にやさしい遺伝子キャリアーとして利用できることが明らかになった。ただし、高濃度条件下ではセラソーム/プラスミド複合体は架橋により巨大化することも明らかになり、今後克服すべき問題として残った。一方、プラスミドの代わりに小さな21塩基対のsiRNAを用いると融合も架橋も起こらず、適正なウイルスサイズを維持する。その結果、セラソームは遺伝子発現を制御するsiRNAのキャリアーとしてきわめて有効であることが明らかとなった。
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