研究概要 |
酸化チタン(TiO_2)光触媒が紫外光を吸収して生成する電子と正孔がTiO_2表面の吸着水や酸素分子と反応すると、種々の活性種が生成する。これらの活性種は有機化合物を分解したり、細菌を死滅させたりするため、光触媒は現在広く環境浄化に利用されている。光触媒反応の医療への適用も進められつつあるが、それには生体関連物質への光触媒作用を分子レベルで解明する必要がある。カルシトニンはカルシウム調節ホルモンとして主に骨に作用し、骨吸収を抑制する働きをもつ。本研究は生理活性ペプチドであるヒトカルシトニンの触媒表面への吸着状態を検討し、光触媒作用による分解過程を解明することを目的とした。 本年度は次のような結果を得た,6種の特性の異なるアナターゼ型酸化チタン光触媒について安息香酸と酢酸の分解活性の違いを検討した。また、各種、酸化チタンを高温で焼成し、固体表面の疎水性を増したときの分解活性についても検討した。その結果、酸化チタン表面上の疎水部が、光触媒活性が強いということが明らかになった。次にアミノ酸の分解活性をAlaとTrpについて、詳細に検討した。光触媒作用はAlaとTrp単独では両方とも容易に酸化分解されるが、AlaとTrpの混合液ではAlaの分解が著しく抑制される。この結果は疎水性アミノ酸Trpが光触媒の疎水的活性部位に優先的に吸着するため、アラニンの活性部位への吸着が抑制され分解が低下したものと思われる。さらに他のアミノ酸についても分解活性を検討し、疎水性相互作用で繊維化が進行するカルシトニンについて、各種光触媒の繊維化阻止能を検討する。
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