研究概要 |
本研究は、高温かつ広い酸素分圧雰囲気下で安定な酸素分離膜を探索し、それを高温での二酸化炭素から一酸化炭素を分離する分離膜として機能するかどうかについて検討する。本年度検討を行ったのは、ペロブスカイト型酸化物La_<1-x>Sr_xCo_<1-y>M_yO_3(M=Cr,Fe)とK_2NIF_4型構造のLa_<2-x>Sr_xNiO_<4+δ>である。 前者は、Coの高い酸素解離能力と酸素移動度に加え、CrやFeを固溶させ還元雰囲気まで安定化した。ただ、電子導電性は、Cr、Feの固溶量が大きくなるにつれ減少した。また、酸化物イオン導電性は固溶量の多い試料ほど低下した。高温で(1200℃以上)、CO_2下での酸素分圧と5桁酸素分圧差をつけてCo分離を行うためには、y=0.5程度のFeやCrを固溶させペロブスカイト構造を安定化させる必要であったが、このような条件下では、膜自体の酸素解離能力が低下して、高い効率が得られなかった。適当な触媒の表面コートが必要である。 K_2NIF_4型構造を有するLn_2NiO_<4+δ>(Ln希土類)は、低酸素分圧下でも安定であるので、Srをドープすることによって(Ln_<2-x>Sr_xNiO_<4+δ>)組成幅を広げ、酸素透過・二酸化炭素分離膜の特性の検討を行った。緻密な気体分離膜に利用可能な焼結体が得られた。酸素過剰量を求めた結果、Srの固溶量xが大きくなるにつれ酸素量は減少した。電子導電性は、Srの固溶量xが大きくなるにつれ増加した。Srをドープしたことにより電子導電性は増加した。酸素透過能測定の結果、酸化物イオン導電性はSrの固溶量xが大きくなるにつれ低下しx=0.0が最大であった。過剰酸素量が酸素透過能に関係するようである。また、酸化物イオン導電性の値はLa>Pr>Ndの順であった。二酸化炭素分解能測定の結果、一酸化炭素の発生が確認され、二酸化炭素と一酸化炭素の分離が可能であり二酸化炭素分解膜として有用であることがわかった。また、Srの固溶量xが大きくなるにつれ一酸化炭素濃度は減少した。2%H_2(Arバランス)下でもLn_2NiO_4は安定であり、高濃度のCO分離が実現された。
|