多糖類は、特異の立体規則性をもち、選択的な相互作用をする。この固有な性質により、細胞膜での認識機構や、細胞外マトリクスの主要物質であるなど、多糖類は、生体の階層構造の形成において、極めて重要な役割をしている。また、工業的には、分子選択機能性高分子や生分解性材料として活発に利用されている物質群である。本研究の目的は、原子間力顕微鏡法(AFM)と近接場動的光散乱法(NF-DLS)とを融合したナノ階層構造測定装置を開発し、多糖鎖のナノ力学刺激に対する高次構造体のキャラクタリゼーション法を確立することである。 本年度は、原子間力顕微鏡(AFM)の1分子計測法と動的近接場光散乱法(NF-DLS)とを用いたナノ階層構造測定装置の開発を進めた。AFMの計測系の開発は岡嶋が担当し、NF-DLSの開発は古川が担当した。AFM開発に関して、AFMを倒立型光学顕微鏡(既存)上に装着し、ナノ刺激および1分子延伸を行う制御系を確立した。AFMによる高分子ゲル中からの引き抜き実験を行った(投稿中)。この測定とNF-DLSとの融合を次年度進める。また、AFMの熱振動計測法を立ち上げ、ゲルや1分子のナノ力学刺激計測を行う技術を構築した。次年度は、熱振動計測法の高速化を行い、NF-DLSとの融合計測を実現する。一方で、本倒立型光学顕微鏡にレーザー光を導入する全反射光学系を立ち上げた。また、レーザートラップ法と光散乱法との融合計測装置の立ち上げを行っており、次年度は、AFMとレーザートラップとを組み合わせて、広い力領域の計測を行う。
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