多糖類は、特異の立体規則性をもち、選択的な相互作用をする。この固有な性質により、細胞膜での認識機構や、細胞外マトリクスの主要物質であるなど、多糖類は、生体の階層構造の形成において、極めて重要な役割を果たしている。このような巨大高分子の非保存力を測定する手法は、まだ十分に確立していない。本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)による新規な単一分子の操作技術として、高分子ゲル中に埋め込まれた分子鎖をゲル外に引く抜くときの力学的性質を調べる手法を開発した。その結果、分子鎖が一定張力や非線形聴力引き抜かれること、そして、網目構造と1分子力学特性との関係を初めて測定することができた。(論文印刷中)。本計測法は、準希薄媒体や濃厚媒体の中で1分子計測を可能とする新手法であり、巨大高分子鎖間の相互作用を1分子レベルで探索することを可能とする。次に、細胞膜付近のダイナミクスを測定するための方法として、ATFによる応力緩和計測法を開発した。そして、サブマイクロメートル領域の応力緩和挙動のダイナミクスと局所弾性率との関係を初めて明らかにした(論文印刷中)。さらに、ナノ力学刺激の応答の定量計測を目指して、1μm以下のコロイドビーズをプローブした、高分解能コロイドプローブ顕微鏡技術を構築し、その性能評価を行った。その結果、サンプルの深さ方向および水平方向の分解能が、共に向上することが分かった(論文投稿準備中)。本結果は、細胞外マトリクスのようなゲル様の多糖高分子ナノ構造を探索するための強力な手法になると期待できる。
|