圧電性ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)素子に高速微粒子を衝突させて発生する孤立波の生成時間と温度条件を調べた。高速微粒子としてMax-Planck原子核研究所(以下MPI)の加速器で供給された鉄微粒子を使用した。速度と質量を同定できたサンプルは、速度20km/s以上で20個、10–20km/sで40個であった。解析中なので中間結果として報告する。 1.出力信号の波形の速度依存性を再現した。波形は速度により3種の範疇に類別され、孤立信号は高速領域で発生することを確認した。今回のサンプルを用いて、衝突速度と立上り時間の線形関係をv(km/s)=91–0.2t(ns)±6を確認した。 2.衝突時に遅れてPZT素子から孤立波信号が発生することを調べた。速度20km/s以上のサンプルのうち5事象を、速度12–15km/sでは5事象を取った。これらの事象から、遅延時間τと速度との関係は概略次のようになる;τ(ns)=467/v(km/s)+24.2。 他方、異なった範疇に属する10km/sより低速領域では、衝突後の遅延時間は短くなる傾向が見られる。このことは、波形形成と遅延時間が関連していることを暗示する。 3.衝突時の状態を記述するため、衝突時の温度を推定した。短時間の反応なので、分光感度の異なる光電子倍増管(PMT)の応答を利用した。可視光感度(400K)のPMTでは速度によらず発光が観察される。他方、紫外領域に分光感度(200S)を持つPMTは20km/s近傍から高速になると顕著な信号が確認できた。この結果温度は数万K程度と推定される。 以上の結果、典型的な孤立波は、測斐数万Kで圧力TPa程度の下で、衝突後50ns程度より短時間に形成された。この研究により孤立波発生機構を詳細に探求する端緒が開けたと結論する。
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