研究概要 |
大気圧マイクロプラズマジェットによるCH4/Ar系からの針状シリコン結晶(SNC)の成長解明を目的として、微細構造の観察、プラズマ診断および基板表面のレーザー光反射率の実時間その場計測を通して診断した。内径700μmのタングステン製筒状電極に高周波電力を供給し、中心部からArを供給することで電極先端にプラズマジェットを生成し、周囲からCH4を供給することで電極直下に設置した金属コートシリコン基板上の生成物を詳細に調べた。その結果電極直下400μm以内の領域で針状生成物の一様な成長を見出した。またその周囲には多層カーボンナノチューブ(CNT)およびシリコンナノワイヤー(SNW)の成長を見出した。そこでこれらの成長機構の詳細を高分解能サーモグラフィーによる表面温度計測、SEM、マイクロラマン分光、電子顕微鏡観察(TEM)、電子放出特性により評価した。シリコン上の表面温度は、数ミリ秒で1400℃以上に達し、シリコンを十分溶融する温度に達していることがわかった。またSNCは主にナノ結晶Si微粒子、クラスターを内包するSiO_2コーンであることがEDX、ラマン分光により明らかになった。特にCH_4供給、金属コートのSNC成長に与える影響を考察した結果、CH4供給はプラズマガス温度の上昇に寄与し、金属シリサイド微粒子の形成を促進していることがわかった。さらに金属の種類を変えてSNC成長を行った結果、Fe, Cr, Ni等の重金属で顕著なSNC成長が観測され、一方融点の低いAu, Ag、Alでは成長が見られなかった。以上の結果はSiより融点の高い金属でSNC成長を促進することを明らかにした。さらに表面形状のプラズマ照射時間に対する観察、レーザー反射率の実時間評価から、熱プラズマジェットの金属コートシリコン基板照射直後のSiの溶融およびその冷却過程において、金属シリサイド液体から相変化に伴うシリコンと金属シリサイドの析出および液体から固化に伴う体積膨張がSNC、SNW等の微細構造を決定していることを明らかにした。
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