研究概要 |
本研究は、環境適応型オプトエレクトロニクス材料としてカルシウムシリサイドに注目し、Ca_2Siなど定比化合物の結晶性薄膜をSi(111)表面にエピタキシャル成長させる条件を見つけることをめざしている。2年間を通じたAES実験、MIES実験によって、低温での固相反応に基づくCa_2Si成長の可能性が実証された。 第2年度はSi(111)表面上に蒸着されたCaとSi(111)基板の低温固相反応における表面最外層電子状態変化を分析するという方角から表面に形成される物質相の構造の解析を行った。主な手法は準安定原子誘起電子分光法MIESである。以下に結果を要約する。 1.Si(111)表面に蒸着された数原子層Caと基板Siの反応(温度依存牲): (1)温度200-300℃で成長した化合物のMIESスペクトルにCa_2Siの特徴が現れた。即ちSi-3sバンドの狭帯域化、これはSi-3s電子がCa-Si結合に関与しなくなることを意味する。 (2)400-500℃ではSi含有率のより大きい化合物(CaSi, CaSi2)の状態密度構造に対応するMIESスペクトルが得られた。 2.Ca/Si(111)表面の高温アニーリングによる超構造: アニーリングによりCa吸着量を減じていくに従って順次2×1,5×1,擬3×2超構造が現れた(LEED観察)。基板の微斜面性とアニーリング電流に影響されて単ドメイン化され傾向にある。 3.各超構造に対応するMIES測定: MIESスペクトルのピーク構造を、その超構造の基本要素と考えられるSiジグザグ鎖構造やhoneycomb構造の電子状態と対応付けた。
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