研究概要 |
レーザー光による曲率の異なる2つの球面波を重ねて結像し,一方の光に周波数シフトを与えることによって,中心方向へ移動する干渉ビートを発生させ,このビートにより数10μm程度の大きさの円の外縁部から中央部へ移動しながら中央で沈み込む同心円状の干渉縞を発生させ,中央部の比較的広い領域内に直径1μm程度の粒子を閉じこめるトラップ技術を開発した.ビート発生のための周波数差は回転位相版を用いた.試料として,ポリスチレン微小球を用い,周辺部から微小球を中心付近に集め,保持することが出来ることを確認した.また,粒子の移動速度が干渉縞の移動速度よりも遅くなっても,粒子を中心付近へ導く効果が残されることも分かった.具体的には, (1)トラッピング用の光源として,中心波長800nmのチタンサファイアレーザーを用い,試料として直径1μmのポリスチレンビーズを蒸留水中に分散したものを用い,倍率40倍,開口数0.75の対物レンズを用いたときの干渉縞,およびビームプロファイルを確かめた. (2)対物レンズに入射するレーザーのパワーを80mWとし,試料溶液中に干渉縞を作製したところ,干渉縞の明部にビーズが捕捉されることを確認した.干渉縞を秒速2.7μmで走査したところ,中央部へ向かう干渉縞の動きにそって,ビーズが誘導され,干渉縞の中央部に集積してゆく様子が観察できた.干渉縞を走査しない際には,ビーズの誘導は確認されなかった.ビーズの移動速度は半波長板の回転周波数に依存した.また, (3)半波長板の回転方向を逆転させると同心円状の干渉縞の外側に向かってビーズが誘導されることがわかった.半波長板の回転により,同心円状干渉縞の動きを制御することができ,多数の粒子のもしくは単一粒子の運動を同時に操作することが可能であることも分かった.
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