研究概要 |
ヒトを含む様々な生物のゲノム解析が完了し,一方で蛋白質構造解析プロジェクトが進行しつつある現在,蛋白質の機能発現に関する研究は,個々の分子を対象としたものから複数分子間の相互作用を解析するものへと移行しつつある.本研究では(1)ビートトラップ法,(2)空間的追跡法等の手法を用いて特定の単一粒子を長時間観察し,蛍光相関測定等の分析手法と組み合わせることにより,特定粒子固有のパラメータを推定する技術を開発することを目的としている. 本年度の成果は以下の通りである. 1.ビートトラップ法よりも更に制御性の高い方式として,液晶空間光変調器を用いるリングトラップ法を開発した.本方式の特長として,(1)中央部においてトラッピングポテンシャルを下げられるため,粒子が自由に運動可能,(2)トラップの速度等を可動部なく制御可能,等が挙げられる.2.ビートトラップおよびリングトラップにおいては複数の粒子がトラップされる可能性が高いため,そのような複数の粒子の個々の動きを捉える手法について検討を行った.具体的には,参照粒子及び観察対象粒子に超短パルスを照射し,非線形光学効果により発せられる誘導パラメトリック光の干渉パタンを解析することにより,ビートトラップ中の複数粒子の分布を求める検討を行った.原理確認実験において感度を検討したところ,およそ6μm平方内に存在する粒子を干渉検出する見込みを得た.また,本干渉検出法が,誘導パラメトリック光の高感度検出にも応用できることを見出した.試料からの誘導パラメトリック光と参照光との二光束干渉パタンを検出し,ビームパタンを解析することで,スペクトル干渉法よりも簡易な実験系を用いながら更なる高感度検出が可能であることを実証した.
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