研究課題/領域番号 |
17656028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 堅志郎 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90013218)
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研究分担者 |
酒井 啓司 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (00215584)
美谷 周二朗 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10334369)
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キーワード | 分子回転 / 回転・並進結合粘性 / 分子配向揺らぎ / 表面波 / 偏光解消散乱 / 自由度間結合 |
研究概要 |
液体の一般的な物性値として熱伝導率、拡散係数、粘性などが知られている。これらは流体中の複数の分子が相互作用しながらミクロな運動量やエネルギーを輸送する過程を表す輸送係数である。本研究は、分子の回転と並進運動のカップリングを記述する新しい輸送係数「並進・配向結合粘性μ」を様々な種類の流体で測定する要素技術の開発を目的とする。さらに分子配向によって特徴付けられる液晶や生体膜構造について、並進・配向結合粘性を測定し、その形成にとって結合粘性が果たす役割を調べ,集団的な分子配向構造の形成メカニズムを探る。 ミクロな配向秩序という新たな自由度を持った流体の運動を、配向と並進運動のカプリングまで考慮して記述する運動方程式には三つの輸送係数が現れる。ひとつは並進運動量の輸送係数であり、今ひとつは分子の回転のモーメントが周囲に拡散してゆく過程をあらわす回転粘性である。本年度の研究により、さらに回転・並進結合粘性の計測を可能にした。申請者らが考案した光スペクトロスコピー技術を偏光解消散乱測定という光学配置に置くことにより、熱的な分子運動が起源となって現れる試料中の自発的な分子配向ゆらぎの観察に成功した。得られるスペクトルは分子配向と並進運動が結合している場合の特徴を表しており、中央部の深さから規格化された結合パラメータ得られた。 一方、上で述べた光散乱測定で得られるのは3つの粘性の比であり、すべての輸送係数の絶対値を決定するためには情報が不足している。そこで、申請者らが開発したもうひとつの回転・並進結合プロセスの観察手段を用いて、別の規格化パラメータを決定することにより、すべての輸送係数を定量的に決定することに成功した。
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