落下塔施設を利用した微重力の環境で液中アーク放電によるカーボンナノ材料を合成するための装置を開発した。同装置は落下カプセルに設置可能な形態にしており、微重力を感知すると所定時間の後に放電を開始するようにした。また、液中アークプラズマ領域にガスを導入できるようにした。無重量研究センター(土岐市)において同装置を用いて、(1)純カーボン電極を用いた水中アーク実験、(2)純カーボン電極を用い窒素ガスを導入した水中アーク実験、(3)ニッケル含有カーボン電極を用いた水中アーク実験、(4)ニッケル含有カーボン電極を用い窒素ガスを導入した水中アーク実験、の4種類の反応系で実験を行った。実験より、水中でアークプラズマを包む気泡が微重力の環境では直径4-5cmになるが、地上実験では最大でも10mm程度にしかならないことから、カーボン電極間のアーク放電により生じる炭素蒸気の冷却速度が微重力の環境でははるかに小さくなることがわかった。また、各実験条件からの生成物の分析により、カーボンナノホーン、カーボンナノオニオン、単層カーボンナノチューブの生成が微重力の環境では起こりにくくなることがわかった。これらの結果より、カーボンナノホーン、カーボンナノオニオン、単層カーボンナノチューブの生成機構には迅速な炭素蒸気の冷却が重要な役割を果たすことが考えられる。なお、ニッケルを混入したカーボン電極を使用したときは微重力の環境でもニッケル内包カーボンナノカプセルの生成が見られた。現在、それらのニッケル内包カーボンナノカプセルの構造の解析を行っている。
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