研究概要 |
本研究では,高分子材料を分子鎖の集合体として捉えたメゾスコピックレベルにおける材料特性解析モデル,すなわち,「分子鎖ネットワークモデル」に基づく材料特性の力学場連成解析手法を開発することを目的とする.本年度は3次元ネットワークモデルを構築し,それをもとに以下の点について検討した. 1)モデル及び解析手法の三次元への拡張を行ない,ひずみ速度を変えた三次元の引張り解析を行った.その際,温度変化とひずみ速度の変化を考慮し,各変化の破断に与える影響について調べた。そして,引張試験による結果と解析結果とを比較,検討し,ひずみ速度が速いときに,静的なときよりも破断ひずみが向上する場合には,分子鎖間の摩擦熱に起因する昇温によって,分子鎖の破断が抑制されていることを示した. 2)ネットワークモデルを用いて高分子系粘着剤を表現し,重合度と付着強度の関係について検討し,重合度によって付着強度が変化するメカニズムについて明らかにした.また,凸凹のある被着材を想定した解析により分子鎖レベルのアンカー効果についても検討を行った. 3)力学的特性に影響を及ぼす高分子の分岐および架橋構造のモデル化について検討した.そして,分岐の数と側鎖の長さを変化させたモデルを作成し,引張解析を行い,分岐の数と側鎖の長さが力学的特性に与える影響について検討した. 4)ナノインデンテーション試験を想定した押し込み解析手法を提案した.そして,解析から得られる荷重変位曲線の外形が一般的ものと一致することから,押し込み解析の妥当性を示した.そして,紫外線硬性化樹脂を想定したモデルに対して押し込み解析を行い,硬化の分布と押し込み特性との関係について明らかにした.
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