研究概要 |
(1)鉄鋼材料の内部の欠陥検出を目的として,高輝度光科学研究センター(SPring-8)のアンジュレータのビームラインBL20XUにて測定を行った.検出器にはシンチレータとCCDカメラを組合せ,屈折コントラスト法を適用することから三次元トモグラフィ像を構築することを試みた.板材の測定は困難であるが,円筒状の試料の測定が可能であることがわかった.直径1mm程度の鉄鋼材料中の欠陥を高精度に検出するためには,最低でも60keVの高エネルギー放射光が必要であることを明らかとした.これを用いて,材料中の介在物(直径10μmのTi化合物)が検出可能であることを示したが,60keVの高エネルギー放射光では,モノクロメータへの熱負荷が大きくなるため放射光の入射強度が安定せず,より低いエネルギーによって測定する必要があることがわかった.これにともなって,試験片の寸法も直径1mm下にすることが必要である. (2)軸受鋼SUJ2の直径1.2mmの丸棒試験片を用いて,超長寿命の疲労強度となる応力レベルでの試料内部のファセット疲労き裂の検出を試みた.超音波疲労試験機を用いて,寿命比に対して0.1程度から0.9程度まで負荷した試料を測定した.直径10μm程度の介在物の検出は可能であるが,ファセットき裂を検出するためには,引張負荷下での測定が必要であることがわかった. (3)電子部品材料では,はんだ中の熱サイクル疲労が問題となるため,はんだ接合部の測定を行った.この場合,欠陥は比較的大きいため,60keVでの検出が可能であることがわかった.本手法は熱疲労欠陥の拡大の検出に有効であることが示唆された. (4)ガラス短繊維で強化した高分子基複合材料の測定を行い,強化繊維および疲労損傷によるき裂の検出を試みた.この場合には,20keVでの測定が可能であり,高い精度で,すなわち高空間分解能での高精細X線マイクロトモグラフィが可能であることが明らかとなった.疲労損傷材の測定を行い,疲労によって発生したき裂が明確に検出できることを示すとともに,今後,繰返しにともなう疲労き裂の拡大を測定するための基礎データを得ることができた.
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