研究概要 |
破壊事故解析において,原因特定や事故対策のために,破壊した部分に作用した応力を知ることは極めて重要である.本研究では,ストライエーション間隔を利用する従来手法が適用不可能である疲労き裂の発生起点近傍の低ΔK領域でも適用できる破面の作用応力推定法について検討することを目的とする.疲労破面に生じる薄い塑性変形層の電気抵抗が作用応力に応じて変化するという事前調査の結果から,本年度は高周波電流の表皮効果を利用して疲労破面のインピーダンスを測定し,破面のΔKと関係づける方法について開発を行った. オーステナイト系ステンレス鋼SUS304を供試材として,R=0の疲労き裂進展試験を行い,既知のΔKの破面を製作した.基本材料として,溶体化処理材を電解研磨して製作した無ひずみ材も実験に用いた.起点付近の微小領域におけるΔK推定が行えることが理想であり,インピーダンス測定用プローブ間隔を1mmに設定した.それらの破面と電解研磨面を用いて,接触抵抗の影響を低減するプローブの接触方法,高周波電流の周波数と破面インピーダンスの関係,周囲温度変化が測定値に与える影響,測定値のばらつきの低減方法,回路の共振特性などについて検討した. 破面インピーダンスは高周波電流の周波数の増加にともなって増加したが,回路に含まれるLC成分の影響により周波数に対して共振特性を示し,周波数23MHz前後での測定が最適と判断された.測定値のばらつきは,同一点において1000回以上の繰返し測定を行うことによりかなり低減できた.無ひずみ材からΔK=30MPa√mの範囲において,破面インピーダンスはΔKの増加と共に増加する傾向を示し,高周波電流を用いた破面インピーダンスの測定から疲労破面の作用応力推定が行える可能性が示された.
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