本研究の目的は、搬送・分注・収集したい液体を、1フェムトリットル(立方体ならば1辺1μmと微量)の液滴に分解し、それをデジタル的に扱ってハンドリングする、というシステムを設計して、各種の用途に試用することである。 まず、高分子樹脂の有機溶媒溶液を例に、高周波の超音波で液体を1フェムトリットルまで分散させ、さらに静電気を印加して、この微小液滴をハンドリングすることを試みる。ハンドリングとは、意図した粒子(フェムトリットルの液滴)を選択し、意図した場所(選択された電極上)に付着させることである。 平成17年度研究実績概要 (1)液体の微粒子化について:発振周波数2.4MHzの超音波式霧化装置を用いて、高分子低粘度液体(0.5質量%濃度)を微粒子化した。その結果、中心粒径10μm程度、粒径分布0.5μm〜50μm程度に微粒子化できること、これ以上の微粒子化や、さらに高粘度液体の微粒子化は超音波式霧化方式では困難であることがわかった。 (2)粒径選択について:コロナ放電用針状タングステン電極と電界収集用くし型電極(10μmのラインアンドスペース)を対向配置させた塗布装置を用い、これらの電極間の空間に(1)で霧化した液体微粒子を導入し、両電極間に2kVの電圧を印加してコロナ放電を発生させた。その結果、粒径1μm以下程度の小さな粒子だけがくし型電極に付着し、それよりも大きな粒径の粒子は対流空気の流れに乗っているためくし型電極には付着しないことが確認された。このように電界収集法を用いれば粒径選択が可能であることが分かった。 (3)塗布場所選択について:(2)の塗布装置において、くし型電極の電位を0V、100V、0Vというように交互にすると、0Vの電極のみに液体粒子が付着することから、液体粒子はコロナ放電によってプラス電位に帯電していること、それを用いれば、目的の電極だけに選択塗布できることを確認した。またこのように選択塗布は可能であるが、塗布された電極の幅の中央付近にのみ液体粒子が集中して付着するという問題点も明らかになった。 (4)毛細現象と静電泳動現象を用いた塗分け法について:上記とは別の方法として、微小液体に生じる毛細管現象と静電泳動現象を利用して、多数電極のうちの目的の電極にだけ液体を塗布する実験も行った。その結果、フェムトリットル級の微小な体積の液体にとっては、毛細管現象により働く力が大きすぎて制御が困難であることが分かった。 次年度の計画について:さらに高粘度の液体、具体的には高分子有機EL樹脂の有機溶媒溶液を微粒子化すること、さらには電界収集法における電界強度分布を工夫して、塗布膜圧厚を均一にすることを試みる予定である。
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