本研究では、光造形法などのラピッド・プロトタイピングで造形した携帯電話などの製品の形状試作モデルの内部に小型カメラを挿入し、ユーザによる使用シミュレーション時のモデル内側の動画像をリアルタイム処理することにより、ボタン、スライダ、ダイヤル、タッチパッドなどさまざまな入力操作の模擬処理と、ユーザによる機器の持ち方や持ち替えタイミングなどの使用状態の計測を、各種センサや回路などのハードウェアを用いず自動的に行なうアプローチを考案した。このアプローチによって、さまざまな入力操作や製品の種類について使いやすさを評価する技術を構築することが、本研究の目的である。平成17年度は、以下の研究成果を得た。 (1)ボタン、スライダ、ダイヤル、タッチパッドなど基本的な入力操作部について、光造形などのラピッド・プロトタイピングによってどのような形状・構造に造形し、どのようにモデル内部に小型カメラを挿入し入力操作や後記の使用状態を検出、処理するかを決定した。 (2)光造形で製作される透明な形状モデルを想定し、透けて見える手や指の影の濃さや分布、移動などを検出することにより、ユーザによる機器の持ち方、持ち替え、(各指に色の異なるマーカを貼り付けるなどの方法による)指の使い分けやタイミングなど、さまざまな使用状態を自動的に計測する方法を決定した。 (3)小型魚眼CCDカメラ、パーソナルコンピュータなどを用いて、モデル内部にカメラを挿入し内部の動画像をリアルタイムに取得、処理する環境を構築し、その上で(1)(2)で考案した画像処理アルゴリズムを実装した。 (4)以上のシステムを用いて、リモートコントローラを模したボタンの位置による使用状況の変化、五十音表の子音と母音の入力を組み合わせた日本語入力装置の機能シミュレーションを行ない、本研究の手法の基本的な有効性、可能性を示した。
|