本研究では、光造形法などのラピッド・プロトタイピングで造形した携帯電話などの製品の形状試作モデルの内部に小型カメラを挿入し、ユーザによる使用シミュレーション時のモデル内側の動画像をリアルタイム処理することにより、ボタン、スライダ、ダイヤル、タッチパッドなどさまざまな入力操作の模擬処理と、ユーザによる機器の持ち方や持ち替えタイミングなどの使用状態の計測を、各種センサや回路などのハードウェアを用いず自動的に行なうアプローチ(内部動画解析法)を考案した。内部動画解析法によって、さまざまな入力操作や製品の種類について使いやすさを評価する技術を構築することが、本研究の目的である。平成18年度は、以下の研究成果を得た。 (1)小型魚眼CCDカメラ、パーソナルコンピュータなどを用いて、モデル内部にカメラを挿入し内部の動画像からユーザビリティの元となるさまざまなデータをリアルタイムに取得する環境、装置を実装した。 (2)携帯機器において主として親指のみで操作することを想定した、五十音表の子音と母音の組合せを扇形配列のキーで入力する日本語入力方式を発想し、上記で実装した装置、環境を用いて評価を行なった。その結果を、通常の携帯電話で用いられている日本語入力方式と定量的に比較し、設計の上流段階で発想の有効性を定量的に評価しうることを確認した。 (3)以上の成果で、手指の動きに関するデータの取得はできるが、ユーザピリティの大きな要因の一つである操作時の力(ユーザが製品に適用する力)の計測はできない。そこで、内部動画解析法を発展させて力の計測を行なう可能性を検討した。その結果、光造形法による透明筐体と内部カメラを用いた、光弾性解析の応用や応力発光材料を混入した樹脂による造形などの可能性を着想し、それに関する基本的実験、フィージビリティの確認を行なった。
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